*きよみのアンティーク*ブログ

あまり知られていない時計~技術スタッフ

技術スタッフの宮尾でございます。
いつも、「きよみのアンティーク」をご利用いただき
また、ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

今回は少し趣向を変えて
あまり知られていない時計」をご紹介したいと思います。

 

Christophe Claret クリストフ・クラーレ

クリストフ・クラーレは複雑機構を得意とする時計師であり、経営者・デザイナーでもあります。
1978年、時計学校に通いながらも、リヨンで時計工房を立ち上げます。
グラハム、ジラール・ペルゴ、ハリー・ウィンストンなどのムーブメントを製作し、
現在は自社時計を製作販売しながらも、20社以上のブランド向けに、48種の複雑機構ムーブを供給
しています。

2011年バーゼルワールドで発表された「21ブラックジャック」は本物のミニチュアカジノのように
仕上がっており、3つのゲームが楽しめる遊び心のあるインタラクティブな時計です。


21 Blackjack 2,900万円

何故か「21ブラックジャック」ばかりが取り上げられますが、
クリストフ・クラーレの真骨頂は、2014年に発表された「Margot マーゴット」です。
個人的にレディース時計において、現行モデルの最高傑作だと思います。

ケースやダイヤルは勿論、ムーブも全てが美しい…。
機能として「花占い」が出来ます。
“彼は私を愛している?”・・・「まったく」、「少し」、「多少」、「情熱的に」、「狂おしいほど!」

古典的であり、本当に可愛らしくロマンチック。ダイヤのカッティングもエレガント。
そして、ストーリーをも存在させています。
クリストフ・クラーレのレディース時計は女性の本質を完璧に体現してるのではないかと思います。
動画は2014年のものですが、マーゴットはシリーズ化されております。


Christophe Claret Margot 2,600万円

 

Graff グラフ

Garrard ガラード、Asprey アスプレイと並ぶ、イギリスを代表するジュエリー・ブランドの1つです。
1960年設立と歴史は浅いのですが、「21世紀のキング オブ ダイヤモンド」と呼ばれ、
大粒ダイヤモンドを得意とするハイ・ジュエラーです。
特にアジア諸国の富裕層や、中東の王族や石油王を顧客としてシェアを拡大して来ました。
アジアの富裕層が好むような、ダイナミックでゴージャスなデザインが特徴です。
日本にも9店舗ございます。

1970年に発表された「ヘアー&ジュエル」は当時の価格で1億円。
2013年に500億円を掛けて現代に蘇えらせました。


Graff Hair&Jewel

時計になるとバタフライ・ウォッチが特に有名です。
こちらもシリーズ化されております。


Graff butterflywatch
クォーツですが、480,000CHF(5,400万円)

 

突然ですが現在、世界で最も高価な時計ベスト3 です。

 

3位は

 

Breguet Grand Complication Marie-Antoinette
ブレゲ グランド・コンプリケーション マリー・アントワネット


$30,000,000(33億円)

時計の歴史を200年早めたと云われる、天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲの作品「No.160」です。
製作に時間が掛かり過ぎて生存中に間に合わず、ブレゲも亡くなってしまい、ブレゲの息子さんが完成させています。

では、この時計。フランス革命後に一体誰が購入したのでしょう?
各国の資産家やら海軍将校やらコレクターやら大泥棒とか出てきます。
何故か持ち主はハッキリせず、でもしっかりと修理には出されており、修理台帳には毎回違う名前が記載されています。
また、25年間も消えてしまったりなど、ミステリーなエピソードに心踊らされますが長くなってしまいますので、また別の機会にお話し致します。

ブレゲがマリー・アントワネットの依頼を受けて作成した。と、一般的には言われていますが、
実際のところ、錠前作りが趣味だった夫「ルイ16世」が妻の名前で発注した説が一番有力だと思われます。

トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、スプリットセコンド、パワーリザーブ、
均時差表示、自動巻き。
こんなギミック満載で、大きな時計は女性の趣味ではありませんよね。


こちらのChatelaineシャトレーヌは実際にマリー・アントワネットが使用していたブレゲの時計です。
これを見ても、マリー・アントワネットならきっと可愛らしい時計をオーダーし、ブレゲもその期待
に応えたことと思います。

店主が過去に開催された「マリー・アントワネット展」に行って、
「ものすごい人がいっぱいいたけど、既知情報ばかりだった」と言っていたことを思い出しました。
かく言う私も「フランス革命陰謀説」を支持しており、マリー・アントワネット擁護派であります。
時代を超えてマリー・アントワネットの影響力は今もなお絶大ですね。

 

2位は

 

Graff Diamonds The Fascination
グラフ ファシネーション



$40,000,000(44億円)
全部で152.29カラット
(うちセンターのペアーカット・ダイヤモンドは38.13カラット)
真ん中のダイヤはリングとして着用可能。
ラストでは無いのにラスボスが出て来てしまった感じです。クォーツ。

 

1位は

 

GRAFF hallucination
グラフ ハルシネーション


$55,000,000(62億円)
「惑星地球上で最も希少な天然カラー・ダイヤモンドのみを使用」と謳っております。

商品名どおり「幻覚」なのではないかと…。やっぱりクォーツ。

グラフの1,2フィニッシュという結果になりましたが、
機能的、歴史的な評価が低いことに、技術者として少しやるせない思いがします。

第二次世界大戦時、ドイツはスイスを戦争継続するための「金」の決済窓口として利用しました。
その為、スイスはドイツに侵略されることはなかったのですが、貨幣・金・宝石・美術品などの
流通に制限を掛けます。ラッキーなことに時計は対象外でしたので、資産家たちはごぞって宝飾
時計の作製を依頼することになります。
結果的にヨーロッパ大陸全体のニーズを拡大、生産方式にも機械生産方式を取り入れることで輸
出を増大させ、スイスの時計産業はめざましい発展を遂げます。

現代では、どこに居ても「時刻」確認出来る状況であり、こうした過去の歴史を鑑みると、時計
としての価値よりも、宝飾価値が先行することは当然の流れなのかも知れません。

今回は長文と余談が多くなり、大変失礼致しました。
素敵な時計を作っているのに認知度が低いメーカーが多くございます。
また機会がございましたら、今後もご紹介して行きたいと思います。
ありがとうございました。

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