*きよみのアンティーク*ブログ

【New】時計の油~技術スタッフ

技術スタッフの宮尾でございます。
いつも「きよみのアンティーク」をご利用いただき
また、ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

【時計の油】についてご質問承りましたので、回答致します。

 

先ず、時計に使われる代表的な油(潤滑油)をご紹介します。

9501:衝撃面に強い力が加わる所へ
香箱真、巻真、丸穴車、裏押さえジャンパーなど
D5:高トルク低回転用
2番車穴石、3番車穴石、地板ポストなど
9010:低トルク高回転用
4番車穴石、ガンギ車、耐震装置
9415:ツメ石専用
アンクル出ツメ
8300:ゼンマイ用

ムーブメント・メーカーが作成した「テクニカル・ガイド」とよばれる
マニュアルに書かれたとおり、適切な箇所に適切な量を注油していきます。
…が、実際のところは技術者によって大きく異なります。

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時計の癖・不具合の多い箇所など、実践的な経験を基に
マニュアル指定では「少量」と明記されているのに「極小」にしたり、
油の種類を変更したりします。
宮尾の場合、6~7種類の油を使用しております。
これは時計にとって、よりベストな状態にすることを意図しています。

油成分の古くは植物性、動物性、鉱物性の天然油でした。
しかし、現在の油ほど耐久性はなく、揮発劣化しやすく、残渣(ざんさ)
が残り摩耗の原因になりました。
当時のオーバーホール頻度は現在よりも、ずっと早かったのだろうと思います。

この油はスイスのメービス(Moebius)社が製造しています。
ある油1種類の1年間で製造される量は、たった1リットルだけなんです。
時計に注油される量が極々小なので、その結果10ccが4,000円~6,000円
と高額になります。

しかし、巻上げたゼンマイから解放されるトルク(力)は2番車の軸1mm
四方面積に、約100㎏相当の力が加わっています。
運転する時にしか稼働しない自動車のオイルが5リットル数千円なのに対し、
稼働し続ける時計をサポートする油と考えると…決して高くないのかも知れません。
現在の時計技術開発には、精密機械用油の開発も共存しているのですね。

 

長くても《2年ごとのオーバーホール》をお勧め致します。

各メーカー、修理会社によって異なりますが、一般的に現行モデルのオーバ
ーホール時期は機械式:3年、クォーツ:5年とされております。

オーバーホールは大病にならないための、予防接種だとお考え下さい。
特にアンテーク時計では壊れてしまったとき、パーツが作成・ご用意出来な
い場合もございます。
また、いかに油の品質が向上しても、年代ケースの構造上、油が劣化・揮発
しやすいなどの問題もございますので、技術者の立場から申し上げますと、
長くても《2年ごとのオーバーホール》をお勧め致します。

 

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OIL各種

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