*きよみのアンティーク*ブログ

ポーセリンとエナメルの違い~技術スタッフ

技術スタッフの宮尾でございます。
いつも、「きよみのアンティーク」をご利用いただき
また、ブログをご覧いただき誠にありがとうございます。

【ポーセリン】についてお問い合わせを承りましたので、ご説明いたします。

 

ポーセリン・ダイヤル Porcelain Dial
陶製文字盤。

日本では「九谷」・「有田」、ドイツでは「マイセン」、フランスでは「セーブル」、中国では
「景徳鎮」でおなじみの磁器。17世紀くらいから時計でも用いられるようになりました。

釉薬をのせて焼く場合が多いため、外観はエナメル・ダイヤルに酷似しています。17世紀のフラ
ンス製クロックに多く使用されていました。現行品では高級ラインに極稀に用いられています。

製造は1910~1920年代後期をピークに減少しました。原因は割れやすいからです。
経年劣化による変色がほとんどないのですが、衝撃に弱いためにクラックが入らず綺麗な状態で
現存しているアンティーク時計は鮮少です。

製造方法は砕いた「カオリン(陶器の原料となる磁土)」を900℃以上の高温で素焼きします。
するとミルク色の素地が出来ます。そこに絵付けと釉薬を塗ったあと、1400℃以上の高温で本焼
成します。その後も仕上げの焼成をしますが、絵付けや色のニュアンスによっては何度も焼成を
繰り返します。焼成は高温なので割れるリスクが高く、また焼成後は縮みが発生しますので、縮
小することを想定して絵付けしなければなりません。
と、非常に手間が掛かるのです。

厳密にはポーセリンを用いるための補助として、地板に金属を使用しないものを「完全なるポー
セリン・ダイヤル」と呼ぶようです。
この「完全なるポーセリン・ダイヤル」を使用している時計はグラスヒュッテ・オリジナルのマ
イセン・モデルだけになります。

GLASHUTTE ORIGINAL Senator meissen

グラスヒュッテ・オリジナル セネタ マイセン
着用させてもらいましたが、全て手描きの文字盤は柔らかな視認性を作り出し、
うっとりするほど綺麗な時計でした。

 

エナメル・ダイヤル Enamel Dial
釉薬塗布文字盤

「琺瑯」、「七宝」でおなじみかと思います。
エナメルは陶器ですとフランスの「リモージュ」が特に有名ですね。
起源は古く、古代エジプトやメソポタミアの遺跡からも発見されています。
ポーセリンと同様、17世紀くらいから時計に用いられています。

起源は古いのですが、実は時計業界では既に廃れた技法とされており、それ故に技術継承者や人
材も不足していました。原因は腕時計の普及によるものでした。
それまでの時計は懐中時計が主流でしたので、文字盤面積が広く装飾加工し易い。また、一部の
有力者が持つ為にステータス傾向が強い、より高価で芸術的価値が高い時計が好まれました。
多くの市民が持てるように量産化が進むと、本来の時計としての役割、機能性が重視されるよう
になりました。装飾面積も小さくなり、高価なエナメルはもはや無用の技法となってしまいました。

現行ではパテック、ヴァシュロン、ランゲなど高級ラインの時計に多く見られますが、エナメル
文字盤と云えば真っ先に、「ユリス・ナルダン ULYSSE・NARDIN」が挙げられます。
上記のように既に廃れてしまったエナメル技法をユリス・ナルダンが見事に復活させたのです。
80年代後半の時計業界に戻って来た「古典主義」。
機械式時計が再び着目されたことにより、伝統技術や希少性価値が高いエナメル技法も取り挙げ
られるようになりました。
ユリス・ナルダンは早期にエナメルに注力し、老舗エナメル・メーカーと提携、そして買収。
現在でも他メーカーと比較しても傑出したエナメル文字盤を造り続けています。

ULYSSE・NARDIN

      ユリス・ナルダン

エナメル技法は「ペイント・エナメル」、「クロワゾネ」、「シャンルヴェ」、「プリカジュ
ール」と大きく4つに分類されます。
詳しくお話ししますと、長文になってしまいますので、また別の機会にご説明いたします。

製造方法は「金属酸化物」を含む様々な色彩のガラス粉末を、油彩画で使う「テレピン油」で溶
かして金属版に塗布します。エナメルを薄く何層も重ね、およそ800℃で何回も炉焼きする工程
を経て、冷却後に磨きをかけて仕上げます。

ポーセリンと比較しますとやや割れ難くなりましたが、シェル・ダイヤルと同様にスリ傷が入り
易く、一度クラックが入ってしまうと広がり易い傾向があります。
針抜きの際は息を止めて作業するくらいの技術者泣かせの文字盤です

ヴァシュロン・コンスタンタンはその名も 「メティエ・ダール コレクション(美術工芸コレク
ション)」を発表しています。彫金・ギョーシェ・エナメル・クロワゾネなどなど、ふんだんに
技巧を凝らしております。

Métiers d'Art models in the Vacheron Constantin

ヴァシュロン・コンスタンタン メティエ・ダール
額に入れてリビングにでも飾りたくなりますね。

販売中のポーセリン・ダイヤル時計はこちら[wp-svg-icons icon=”happy” wrap=”i”]

 

********************************************************************

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です